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袖振り合うも多生の縁。私がボンで偶然知り合った、あるマダムのお話

ドイツのボンで電車事故。偶然居合わせた人と相乗りタクシーしたら怖い目にあった話

あこがれの…!ベートーベンが生まれた町「ボン」

ボンの街並み。

ある日の私は、ひとりでドイツのボンの町を散歩していました。旧西ドイツの暫定首都だったとはいえ、すごく静かでほのぼのしたいい場所でした。

その日は、夫はマインツで仕事。ボンから170kmくらい離れた場所で、電車で2時間くらいの距離。ディナーは仕事関係の方々が家族同伴で集まるというので、私も夕飯から合流する約束をしていました。

私は子どものころから、ベートーベンが好きで、彼が生まれたボンにどうしても行ってみたくてひとりで遠足していたのです。早朝から胸をときめかせて散策していたあの日、まさか一生忘れられないような出来事が起きるなんて夢にも思いませんでした。

◆お気楽な一人旅が一転…

ベートーベンの町・ボン。

ベートーベンの生家を見学したり、ショップでベートーベングッズを買ったり、町中でベートーベンを見かけるたびに大興奮。そして歩き疲れるとボンの地ビールを飲んで、かなり余裕を持って駅へ向かったのですが、そこで大変な事故が…。

事故で電車が遅れて、ボンの駅は大混乱

ボン中央駅。

ボン中央駅でマインツへ向かう電車を待っていた時、直前で人身事故が発生。遠くに救急や警察が集まっているのが見えました。そして肝心の電車はぜんぜん来ないし、日本の鉄道のように、何が起きてどう振り替えてくれるのか、親切な案内とか一切ない。さすがドイツ。

ボン中央駅のプラットフォーム。

私と同じように駅のホームで待っていたお客さんたちがだんだんピリピリしはじめました。

夫にメール…「電車が来ないから遅れるかも」

何か様子がおかしいなと思って駅員さんに相談しに行こうと改札へ向かった時にはもう大混乱。静かな田舎町なのに、こんなに人がいたのかと思ういくらい、ものすごい人。どうしたらいいのかよくわからなかった私は、とりあえず、人ごみにいるのは危ないと思って、駅の外へ出ることに。

中央駅から町中へ歩きはじめると、すぐ向こうからタクシーがやってきたので、手を上げたら私の目の前で止まってくれました。ラッキー。しかし、こういう状況だとなかなかすんなり乗車とはいきません…。

言葉が通じない街で、知らない人と相乗りタクシー

よい子は絶対マネをしてはいけないやつです…。私が止めたタクシーなのに、ぜんぜん知らない太ったドイツ人のオジサンと金髪のマダムが、割り込む形でタクシーに乗ろうとし、目の前でケンカを始めました。もう一度言いますが、このタクシーを止めたのは私です。

大きな声、激しい口調、難解なドイツ語でモメ出す2人。私は私で、変なドイツ語とぜんぜん通じないやけっぱちの英語で、「このタクシーを止めたの私なんだから絶対乗るから!」と主張していたところ、ほかにもタクシーに乗りたい人たちが集まってきてしまいました。

ゲーっと不安な表情を浮かべているとオッサンが助手席に乗り込み、マダムは後部座席に。そして「Kommen Sie!(きなさい!)」と腕をひっぱられ、なかば強引に私も後部座席へ。こうして知らない人と3人でタクシーに相乗りすることになりました。

夫にメール…「知らない人たちとタクシーに乗った」

◆空港へいきたいオジサンとエッセンへいきたいマダムとどこへ向かえばいいかわからない私

当たり前ですがタクシーのなかでも、どこへ向かうかの優先順位を決めるのに大いにもめました。助手席に座ったおじさんは空港へ急いでいたらしく「飛行機に間に合わない」といって、「あなたたちは手前で降りろ」とかうるさいし、私と後部座席に乗ったマダムはエッセンへ行きたかったようで「こっちも電車乗るんだからなるべく駅の近くまで乗せなさい」となぜか説教口調。私はなんかもう疲れてしまい「どこでもいいからマインツ行きの電車が出てる駅へ連れてって」というと、運転手がわかったといって車を走らせました。

◆気まずい車内。誘拐されるときってこんな感じ?

ボンからどんどん離れていくタクシー。見ず知らずの人たちとなぜか相乗りしている私。早口のドイツ語で相変わらずもめてるオジサンとマダム、そして無言の運転手。民家はなくなり、窓からは大草原みたいな景色とたまに教会みたいな建物が見えました。どこへ向かっているのかもぜんぜんわからず、心のなかでは「誘拐されるときって、こんな感じなのかな…」と物騒なことを想像し急に不安がこみ上げたりしてました。

夫からはぜんぜん返事も来ないし、このまま事件に巻き込まれたらどうしよう。もしもこれで私の身に最悪の事態が訪れたらネットとかで、「海外で知らない人と流しのタクシーに乗るなんて、どんだけ頭のなかお花畑なんだ」とかって叩かれて、家族はいろんな意味でつらい思いをするんだろうなとか想像してしまい、けっこう泣きそうでした。

夫にメール…「どこかの駅へ向かってるっぽいけどドイツ語で何言ってるかわからない」

偶然、同じタクシーに乗り合わせることになった女性の正体

結局私がタクシーに乗っていた時間は15分とか20分くらいだったと思います。が、気持ち的にはもっと長く感じました。

ボンからタクシーと電車を乗り次いで、無事目的地・マインツへ到着。

無事に知らない駅に連れてきてもらい、隣に座っていたマダムがはじめてすごいゆっくりなドイツ語で「この駅の〇番ホームからフランクフルト行が出てるから、それに乗って乗り換えればマインツへ行けるよ」と丁寧に教えてくれました。なんだかんだで、変なドイツ語しか話せないのに、電車トラブルに見舞われたアジア人の私の心配をしてはくれていたようです。

少しホッとした私は思わず「なるほど」と日本語で返事をしてしまいました。すると、マダム「なるほど?あら、アナタ、日本人なの?」と聞き返してきました。

私「え?それ、こっちのセリフです、私、どっからどう見ても日本人ですよね…」

◆ドイツ語で叫んでたマダム、日本人だった

飴玉みたいな宝石をいっぱいつけて、流暢なドイツ語で現地の男性にもひるまず叫び続けていたマダム。私この人もドイツ人だと勝手に思い込んでいたのですが、なんと現地に住む日本人でした。タクシー代を払おうとしたけれど、「いいから急ぎなさい」とだけ言われ、慌てて連絡先だけ聞いて、「あとでメールしますから~、ありがとうございました~」と言って私は電車に乗り込みました。

知らない駅から、なんか2回くらい乗り継いで、なんとかマインツへ到着。

マインツでのディナーの様子。

マインツの中央駅でタクシーをひろって、ディナーにも普通に間に合いました。私の中では一大スペクタクルを乗り越えたくらいの達成感。半笑い気味の夫から「なんか大変だったようだね」とか言われ、「もっと心配しろよ」とキレたりしました。そして、みんなオシャレしていて、私はジーンズで来てしまったことをひどく後悔したものです。けど、ま、無事でよかった。

すぐにマダムへお礼のメールをしたら…

そして、ホテルに戻ってから、教えてもらった連絡先にすぐお礼のメールを入れました。無事にマインツへついた報告と帰国が迫っていて直接お礼に伺えない無礼をつづりながら、あのとき「Kommen Sie!」と腕をひっぱられた瞬間のことを思い出したりしました。私も、いつか困っている若き旅人を助けてあげられるマダムみたいな人になれたらいいなと思いながら。

すると先方からご丁寧なお返事をいただきました。そこには、あの日、マダムはエッセンに知り合いの猫ちゃんを預かりにいく最中だったこと、時間がなくて焦って怒鳴りっぱなしだったお詫び、そしてドイツの国鉄は日本と違ってサービスが最悪であるという事情などが書かれていて、「今度、ドイツへくることがあったら、ゆっくり座っておしゃべりしましょうね」という言葉で締めくくられていました。こんな出会いもあるのだなぁと思いながら、私の中で人生史上一番緊張した思い出の1ページだけど素敵な出会いがあった貴重な出来事として刻まれることになりました。

◆月日は流れて今更知ったこと

で、こんなことがあったよなぁと10年近くが過ぎた今日、ふと思い出し、当時のメールを読みながら、そういえばマダムは元気にされてるのかな、FBとかやってるのかな、また会えるかな。いろいろな思いを巡らせて、ふとメールの最後に書かれていたお名前を検索してみました。すると、Wikiがある。公式サイトがある。へ?!何者?

あの時の金髪のマダムは、紫綬褒章や旭日小綬章を授与されている、とても有名なオペラ歌手の方でした。10年越しに正体を知ってひっくり返りそうになっています。向こうは覚えてくださっているかどうかはわからないけれど、またいつか人生のどこかで会える日がくるといいなと。


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