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春がくれば桜が咲く!『小暮写眞館』は普通に生きる奇跡を感じさせてくれるよ

桜は開花しましたが、私の宴会部長業務は自粛中。お散歩がてら、静かに愛でることにしたいと思います。さて、家にいる時間が長くなっているので、読書の時間が必然的に増えています。うららかな陽気にぴったりな拍子につられて宮部みゆき先生の『小暮写眞館』を再読しました。

「これ読むの何度目だ?!」ってくらい、毎春読んでいるような気がする一冊です。でも、今年は更にグッと心に寄る部分があったので、自分なりの感想文を書き留めておこうと思います。

誰にとっても特別なことではない家族の死

舞台は築三十三年、木造二階建ての古い写真館。都立三雲高校に通う花菱英一くんが両親と弟の家族4人でこの写真館に住むところから物語がはじまります。

スーパーヒーローとか、超絶美人なヒロインは出てこないけれど、どこにでもいる普通の人がすごく丁寧に描かれているお話です。幸せいっぱいな光に満ちている、ごく普通の家庭に見える花菱家ですが、英一くんには、「風子ちゃん」という妹がいたという悲しい過去がありました。

人はみんな生まれた時から死に向かって生きているとわかってはいても、ついついそんな当たり前のことを忘れて時間を雑に過ごしてしまいますよね。おろかなんです。でもそこに人間の魅力があるようにも思います。

インフルエンザ脳症で4歳という幼さで命を落としてしまった「風子ちゃん」との思い出が、一緒にいた記憶が、ときどき花菱家の家族に暗い影を落としている様子が物語を読み進めていくにつれて深まっていく感じが、700ページを超える大作なんですけれども、あっという間に読めてしまうくらい毎回感情移入してしまうんです。

葬式でもめたがる遠くの親戚たち

「遠くの親戚より近くの他人」とはよく言ったものですが、主人公の花菱英一くんがラストシーンで「いっぺん、はっきり言っておくべきだと思うので言いますが」と前置きして親族に言い放つ言葉は、何度読んでも胸に染みます。真夜中にめそめそ泣いてしまいます。

日ごろたいした付き合いもないのに、慶事や弔事のときだけしゃしゃってくる人というのにろくなのはいません。自分の都合のいい時にだけ顔を出してくる人、口を出してくる人、年齢でしかマウントをとれないような人に、高校生の英一くんは毅然とした態度で立ち向かいます。

私はとうに彼の年齢の倍くらいは生きているわけではないのですが、この最後のシーンは、何度読んでも、「もし自分が同じ場面に遭遇して、ここまでハッキリした態度をとれるだろうか」と毎回考えさせられてしまいます。でもいつまでもダラダラ無駄な付き合いを続けることへの無意味さもよく分かるようになったからこそ、穏やかな文体なのに、その核心をついた描写ひとつひとつに胸をうたれるのです。

血縁を重視し続けてきた日本の社会の中で、一般的に排斥されるようなどうしようもないクズ度の高い人間というのは最終的に親族を頼れなくなるわけですが、どこかで線をひいて関わらないようにしないと、自分の家庭が壊されるのだなという危機感も持ちました。

季節は止まらないし、時間も流れ続けていく

——いつまでも停まってるんじゃないよ。駅は長居する場所じゃない。

引用:小暮写眞館 |講談社|宮部みゆき著

春の花がいっぱいに咲いているラストシーンで走り出す英一くん。コロナで停滞する経済や自粛ムード漂う世の中ですが、私たちの人生の時間は限られているし、季節は変わらず巡ってきて、今年も桜がキレイに咲いた素晴らしさを改めて思い出させてくれます。

線路は続いているのだから。今はまだ見えないどこかへ向かって走ろう。

引用:小暮写眞館 |講談社|宮部みゆき著

人との付き合い方とか人生との向き合い方、自分の進路を一回立ち止まって考えたくなる春に読むと、英一くんの勇気が背中を押してくれるかもしれませんよ。私も彼のような強さがほしいな~と改めて思いました。

【INFO】

今回紹介した本は宮部みゆき先生の<小暮写眞館 (書き下ろし100冊)>です。

宮部みゆき先生の小説は大好きすぎてほぼ全部読んでます。おすすめのストーリーばかり。

ネットにおける現代社会を客観的に見つめられる『悲嘆の門』

雷門を通るたびに思い出す『蒲生邸事件』最後の切ない手紙

何度読んでもグッとくる小説ばかりだから、本棚宮部作品だらけ!

他にも<本を読まなきゃ / BOOK>では、 また読みたいな!って思うお気に入りの本をご紹介しています。