高校生のときに初めて読んで、激しく感情を揺さぶられた愛読書。
井上靖先生の『あすなろ物語』。最初に登場する『深い深い雪の中で』という物語のなかで冴子の「トオイ、トオイ山ノオクデ、フカイ、フカイ雪ニウズモレテ、ツメタイ、ツメタイ雪ニツツマレテ、ネムッテシマウノ、イツカ」という美しく切ない言葉、そして「明日は檜になろう」と叶うことのない希望をもって背を伸ばす悲しい木の「あすなろ」。年齢を重ねた今読み返すと、また更にキュンとくるんですよね。
さて、今回は静岡県三島市にある<井上靖文学館>のご紹介です。都内から三島は新幹線でスグ。駅からはバスも出てるので日帰り観光にもおすすめです。
もくじ
自然豊かなクレマチスの丘にある<井上靖文学館>
『あすなろ物語』のなかで 「寒月ガ カカレバ キミヲシノブカナ 愛鷹山(あしたかやま)ノフモトニ住マウ」 と謳われている自然豊かな愛鷹山の中腹。あのクレマチスの丘のなかにあります。
夏はめっちゃ蝉が鳴いててうるさいくらい。マジで山のなかので、蚊よけ対策してってくださいね。
入口に立てる井上先生の銅像「似てない…」って思ったけれど、ファンなので細かいことは気にしないことにしました!北には富士山、南には駿河湾を望める本当に気持ちがイイ場所です。
階段を登りきるとあすなろの木!なんだか一人でめちゃめちゃテンションが上がってしまいました。
井上靖先生の映像も!迫力を感じる直筆原稿や写真の数々
受付をすると元気だったころの井上先生の映像が流れていました。私はじめて、しゃべってる井上先生を見たので、声とか、「あ!こういう方だったんだ!」っていっきに身近になった感じがして、なんだか新鮮でした。
◆『しろばんば』の直筆原稿は胸に迫るものがある
入ってすぐに後悔しました。『しろばんば』読み直してから行けばよかったなぁ!触ることはできないけれど、ガラス越しに井上先生の直筆原稿が展示されていて、どこをどう修正したのかとか、書き直し部分までみることができるんですよ。これファンにはたまんないですよね。
特にあのラストシーンとか、本の活字にはない、井上先生のやわらかな一文字一文字を読み進めると、またしても泣きそうになるほど。おぬい婆さんとの死に別れの部分なんか、結末知ってても、真に迫る情景が浮かんでくるようで。
◆取材力のすごさ。人がひとり死ぬことの重大さを改めて考えさせられる
『氷壁』の企画展のコーナーは当時の新聞記事などまで読むことができます。切れるはずのないナイロンザイルが切れて死亡した友人の死を主人公が追っていくというドラマチックなストーリー。これ、ナイロンザイル事件という実際に日本の登山界で起こった騒動がモチーフだったとは知っていたのですが、井上先生の取材の足跡をたどっていくこともできます。すごすぎ…。
人が一人死ぬことの重み。周りの人に与える衝撃。その裏側に何があったのか?井上先生の取材力も去ることながらいろんなことを考えさせられました。
静岡県が誇る偉大な作家!地元の人にも親しまれている井上靖先生
井上先生は幼少時代を伊豆半島の天城湯ヶ島で過ごしていていたそう。中学は沼津。井上先生の作品は、自身の幼少時代をモチーフにしたものが多いので、故郷である静岡では偉大な作家として親しまれているそうです。
ノーベル賞は受賞されていませんが、それに匹敵する名作をたくさん残していますもんね。
改めて、井上先生の本を読み返したい気持ちになりました。私は語彙がとても狭いから、井上先生のきれいな日本語をもっとまじめに学びたいな。
井上靖記念館のチケット料金やアクセス方法は?
JR東海道線「三島駅」の北口(新幹線降りてスグのところ)からクレマチスの丘行きの無料シャトルバスが利用できます。
チケットは大人500円。私は、向かいにあるベルナール・ビュッフェの美術館との共通券を買いました。セットで観光できます!
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