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安らぐ夏時間♡熱海海岸で『金色夜叉』のお宮さんに想いを馳せよう

安らぐ夏時間♡熱海海岸で『金色夜叉』のお宮さんに想いを馳せる

2021年の大雨により被害を受けられた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

明治時代の名作『金色夜叉』の世界

私が『金色夜叉』をはじめて読んだのは多感な19歳のときのことでした。日清戦争後、混迷する日本社会のなかで、貫一とお宮をめぐるお金と恋愛のドロドロした問題は、当時の私には理解しにくい部分が多くありました。

お宮さんは、私くらいの美人だったら、超リッチマンから求婚されるべきであり、将来有望な貫一はとりあえずのキープ!というちょっと生意気な女の子。そして、見事、大金持ちの銀行家と結婚するんだけれども、なんかイマイチ幸せじゃなくって、元カレ・貫一に若気の至りを泣いて詫びていくような始末…。「え~!あのころの強気なお宮さんはどこへいっちゃったの~?!」と難解な日本語を度肝を抜かれながら一生懸命解読していった記憶があります。

『金色夜叉』ってもともと「読売新聞」の”新小説”のコーナーで断続的に掲載された尾崎紅葉の作品なんですが、テレビや映画などなかった明治時代とは思えないくらい、映像を見ているかのような丁寧な描写が印象的でした。グッと引き込まれると時間を忘れてしまうくらいのおもしろさがあります。

そんな『金色夜叉』の昼ドラ的な世界のなかに思いっきり飛び込んでいける場所、それが今回ご紹介する熱海の海岸です。

寛一が熱海の砂浜でお宮を足蹴してるよ

学帽にマント姿の貫一が、下駄でお宮さんを蹴りつけるシーンがそのまんま像に!

『金色夜叉』の有名なあの場面がそのまんま飛び出してきたかのよう。これが熱海の国道沿いの海岸にホントにあるんです。

「宮、おのれ、おのれ姦婦、やい! 貴様のな、心変をしたばかりに間貫一の男一匹はな、……」

引用:金色夜叉 (新潮文庫)尾崎 紅葉 (著)

何にも知らないで、この様子だけ見た人は、女に暴力を振るう男はヒドイ!って思うかもしれないけれど、あの作品読む限り、ひどいのはお宮さんのほうなんですよね(笑)

女に捨てられてどん底な気分で金の亡者になろうと決意するが揺らぎまくる貫一。実はとても人間味あふれてて、憎めないキャラなんですよ。資本主義が当然のように成熟した今となっては、そういう生き方もアリかなと思えるし。

「ああ、宮さん、こうして二人が一処にいるのも今夜ぎりだ。来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は雲らして見せるから」

引用:金色夜叉 (新潮文庫)尾崎 紅葉 (著)

怒りと悲しみと絶望に震えるこの名台詞も、大人になった今読み直すと、なんだかめちゃくちゃ女々しくて愛おしさすら感じられます。

時代を超えて読み継がれる未完の名作

恵まれた環境で育ったはずの男女が、今手にしている幸せに目を向けず、内面を磨くことを忘れ、自分なりの審美眼を持つことを放棄してしまった結末は、切なさを超えた悲劇があります。若いうちはいいのですが、歳を重ねながら狂っていく様子は周囲に混乱をもたらすこともしばしば。

足蹴にしている像のすぐ横にはお宮さんの松も!

明治文学を代表する浪漫あふれる未完の名作。作者の尾崎紅葉は30代で病死してしまい本当に残念なんですが、もし彼がもっと長生きしていたら…。熱海の海を見ながら、あの作品の終焉をどう描いていたのかな、、、なーんて想像してやみません。

【INFO】

今回ご紹介したスポットは熱海にある<貫一お宮之像>と<お宮の松>です。

住所:静岡県熱海市東海岸町(国道135号 下り車線沿い)

いつでも無料で自由に見学できる人気フォトスポットです。

ぜひ本を読んでから出かけてみてね!

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