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落ちるわけない?合格率7割のアメリカ司法試験に不合格だった話

アメリカ司法試験(カリフォルニア州弁護士資格)にマジで受かっちゃったドナルド先生による【連載】米国弁護士試験のホントのトコロ。 今回は私が3年前に、カリフォルニア州の試験に落ちちゃった時のお話。なお米国司法試験の合格率は全体(全州)では60%~70%といったところです。

試験を受けたあと、合格か落ちていそうか、自分でわかるものなのか?

米国の司法試験では、多くの州が択一式試験(MBE)と記述式試験とを採用していますが、MBEについては問題、正答とも完全非公開です。記述式は問題と優秀答案が公開されますが、タイミングが遅いため、合格発表前に正確な点読みはできません

とはいえ、MBEは本番前の演習問題の正答率から予想がつきますし、記述式は論点がうまく拾えたか、当てはめが十分だったか、答案として完成しているか、といった点からおおよそのRaw Score(素点)は推測できます。私が不合格だった際には、記述式が振るわなかったことは試験直後に分かり、MBEはそこそこ手ごたえがあったという感じでした。

◆試験後も正答が不明なので、合否の予測は結構ムズい

受験勉強の様子

結果としては(おおよそ)記述式が1300点、MBEが1400点、平均1350点程度で、当時のカリフォルニア州の合格基準の1440点には箸にも棒にも掛からない結果でした…。記述式は予想通り悪く、MBEのスコアは予想よりもだいぶ悪く、全体としては問題集等の出来と比べて少し悪い程度だったと思います。結論をいうと、私の場合は「まぁ、厳しいかなぁ。でもあわよくば…!」と思っていたらぜんぜんダメでした~!というパターン…(;’∀’)

小室圭さんが司法試験の出来栄えについて「大丈夫です」と秋篠宮さまに答えたなどと一部で報道されましたが、精度の高い合否予想をしがたい試験でもありますので、読み違えもやむを得ないかと思います。

試験が不合格と判明するまでの経緯とその時の心境

米国司法試験の受験勉強の様子。

カリフォルニアの場合、合否通知メールの本文には合否の記載はなく、受験者用の合格者リストへのURLが記載されています。合格者リストは数日後には公表されますが、受験生は先にアクセスして確認することが可能です。受験生向けリストでは受験番号で確認できますので、同姓同名の受験生がいても区別できます。

不合格をある程度の覚悟できていたとはいえ、択一式がうまく転べば~という淡い期待もあったので、自分の名前がヒットしなかったときにはかなりショックでした。カリフォルニアでは不合格者に対しては点数も開示され、惜しくもない結果だった事実が突き付けられます。「また勉強&受験しなければならないのか…」という気持ちが一番強かったでしょうか。時間もお金もかかりますし、渡米しての受験はヘビーです。

不合格だった人が受ける2月の試験の合格率が低いワケ

アメリカの司法試験は年に2回、7月と2月に実施されます。7月はロースクールを卒業したての受験生が多く、2月は7月の試験に不合格だったリピーター受験生が多いのが特徴です。

2月の合格率が7月に比べて著しく低いため、2月の試験の方が難しいと思われている方もいますが、問題や合格基準に異なるところはなく、単に受験生の質の問題と思われます(カリフォルニアでは若干2月期の方がマニアックな論点が問われるという話もありましたが、私は特にその違いを感じることはなく)。優秀な受験生は7月試験に一発合格します。比較的合格率が高い7月の試験に不合格だったリピーター受験生は、そもそもこの試験が苦手なので、2月に再度受験しても合格率が低いです。

また、多くの受験生はロースクール卒業直後の7月期と違って受験勉強に専念できる環境ではないので、勉強時間も削られがちであることも要因であると考えられています。

◆とても憂鬱な再チャレンジへの道のり

受験から合否の判明まで2か月以上かかりますが、合格への淡い期待によりその間は勉強をさぼりがちになり、次回受験に向けての再始動は重たかったです(結局、別のプライベートイベントにより、しばらく再受験することはできず)。英語での暗記は記憶の定着率が低いのか、7月の試験前にはできていた問題が解けなくなっていたり、暗記していたルールをすっかり忘れていたり、受験勉強のリスタートはとても憂鬱でした。

私の場合はフルタイムで働きながらの受験でしたし、アメリカの弁護士資格を強く必要としているわけでもないにも関わらず、オフの時間やお金が試験関係に浪費され、家族にも迷惑をかけていました。資格試験の中には、仮に不合格に終わったとしても、受験勉強を通じて学んだ内容が十分に有益なものもありますが、私にとっての米国司法試験は、不合格のままなら残るものはほとんどないという白か黒かの試験だったので、“やめどき”が難しかったです。

小室圭氏は米国司法試験を受けてない、受験資格がないという噂について

巷では小室圭さんのニューヨーク州司法試験の不合格がニュースになっています。そもそも受験資格がないのではないかという噂も流れています。確かにNY州の受験資格は厳しくなってきているので、LLMに留学したものの、受験資格が認められなかった日本人留学生もいらっしゃいます。小室圭さんの場合はLLM1年⇒JD2年という変則的なかたちなのでますます興味深いですが、通算3年間の留学期間で受験資格を得るために必要な単位もうまく調整したのでしょう。NYの法律事務所(Lowenstein Sandler LLP)にも採用されているわけですし、受験資格は有していると考えるのが自然です。

合格者リストに名前がなかったことについて、実は試験を受けていないんじゃないかという話も出ていましたが、今回はリモート開催だったため第三者が調べる術はありません。ただ本人が不合格を恩師に報告したという報道もありますし、受験して単に落ちてしまったのでしょう。

アメリカの弁護士試験。受験会場の様子。

※ なお、2022年2月は通常通り試験会場での開催となりますので、目撃情報などから実際に受験していたかどうかを確認することは一応可能です。ただ、本人にも他の受験生にも迷惑でしょうから自重すべきだと思います。

それに、アメリカ弁護士試験に日本人受験生が落ちること自体は別に珍しくありません。「私の知人で米国司法試験に落ちた人なんて聞いたことない」というニュースも見かけましたが、そんなコメントを平気でするような人に「実は落ちちゃったんだ~」なんてうっかり報告しにくいですよね(笑)。有名ローファームの日本弁護士さんでも、米国司法試験に落ちた方を何人も存じ上げています。

◆もし2回目も受験して落ちたらどうなるの?

小室圭さんの場合には、生計のために資格が必要な状況のようですので、モチベーションは多くの日本人受験生とは異なるでしょう。ニューヨークでも受験生に得点が通知されますので、ご自身の惜敗率や得意・不得意を把握されたはず。次回の2022年2月の試験では、しっかりと対策を練って挑むことが可能です。

そしてもし次回も落ちたとしても、基本的にはさらに再受験は続けられるハズ。ただ、「弁護士になるとは言っていません」と以前報じられていたことが気になります。本人の意志で受験しているのではないのかな、実は他にやりたいことがあるんじゃないかな、と。


【連載】米国弁護士試験のホントのトコロは随時、質問などもわかる範囲でおこたえしていこうと思いますので、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。


text ドナルド先生 2021年米国(カリフォルニア州)司法試験合格。世界中のディズニー制覇をもくろむアラフォー。