米国弁護士試験(カリフォルニア州司法試験、通称CalBar)を突破したドナルド先生(ペンネーム)による連載「米国弁護士試験のホントのトコロ」。プリンセス・眞子内親王とご結婚の行方が気になる小室圭氏で大いに注目を集めていますが、今回は実際に受験してみた米国司法試験の難易度や日本の司法試験との違いについてお話したいと思います。
もくじ
アメリカは州ごとに弁護士資格が認定されてます!
「米国弁護士」という呼び方は便宜上よく使われますが、日本と違って米国では、州ごとに弁護士資格を認定するので、「ニューヨーク州弁護士」とか「米国弁護士(カリフォルニア州)」などとする方が正確です。日本人の有資格者が名刺に入れる際にもそのようにしていることがほとんどです。
◆試験の内容も難易度も州ごとに違う!
「米国弁護士」といっても、司法試験の内容は州ごとに違います。例えば、カリフォルニア州ではカリフォルニア州法が出題されますが、ニューヨーク州では出題されません。
また、ニューヨーク州では基本的に米国のロースクールを卒業しなければ受験資格を得られませんが、カリフォルニア州では外国の弁護士であれば米国のロースクールを卒業していなくても受験できる「Attorney Applicant」という受験資格枠があるなどの点で異なります。
さらに合格基準・合格率も異なります。下表をご参照ください。私が合格したカリフォルニア州は全米でも最難関の受験地の一つと言われています。えっへん。なお、2020年07月期の試験はかなり特殊な環境下で実施されており、比較に馴染まないので、2019年07月のデータを参照しています。
日本の司法試験の受験料が3万円弱であるのに対し、非常に高額なのも特徴です(州や受験資格・受験態様によって異なりますが、おおよそ9万円~13万円かかります)。
州 | 合格基準点 | 合格率 2019年07月 | 合格率 2021年02月 |
ニューヨーク | 266/400点 | 65% | 49% |
カリフォルニア | 1390/2000点 | 50% | 37% |
アメリカの弁護士試験は年に2回実施されている
もっとも、試験内容のうち、ニューヨークやカリフォルニアで配点の半分を占める択一式試験(MBE)は全米共通ですので、記述式試験部分のみが異なるとも言えます。
日本のように択一式試験の合格者に対して記述式試験を行うのではなく、多くの州では2日間の日程で初日に記述式試験、2日目に択一式試験を行い、その合計点や平均点で合否を決します。
◆優秀な新卒受験生は7月に合格している…
試験は例年7月末と2月末の2回実施されます。春にロースクールが終わるので、その卒業生はまず7月に受験するのが通常です。あいにくの結果になった受験生が翌年2月にリトライします。2月の合格率の方が低いですが、優秀な新卒受験生は7月の試験で一発合格していますので、2月の試験が難しいわけではなく、受験生の質的な面が大きいといわれます。このことは、受験生の質がある程度一定していそうなカリフォルニア州のAttorney Applicant枠の受験生の合格率が、7月でも2月でも特に変わらない点からも裏付けられます。
アメリカ司法試験の合格率は?難易度は?
日本の司法試験は25%前後(近年は40%前後と比較的高い)ですので、それに比べると合格率は高いです。特に小室圭氏のようにロースクールで3年間学んだ受験生は8割から9割が合格しています。
一方、多くの日本人留学生(特に社会人の企業・事務所派遣)は1年制のロースクールに通います。あまり知られていませんが、1年制のロースクール卒(の外国人の合格率)は43%となっており、全体(65%)よりもかなり低くなります。さらに、この数字は英語を母国語とする非米国受験生(英国、カナダ等)を含んでおり、ノンネイティブな日本人受験生の合格率はこれよりも低いと考えられます。
SNS上では合格率だけを捉えて「運転免許の学科試験レベル」など揶揄しているコメントも見かけますが、それはさすがにKKを貶めたいだけの暴論でしょう。日本人受験生は大手弁護士事務所や一流企業の法務部からの派遣が多く、いわゆる受験エリートの方々が、それなりに頑張って受かったり落ちたりする試験、というのが実際のところです(ただし、多くの方は3年間ではなく、1年間だけの留学)。
ちなみに現在の副大統領のカマラ・ハリス氏もカリフォルニア州の司法試験には一度落ちています。
受験資格(ニューヨーク州) | 合格率 2019年07月 |
全体 | 65% |
1年制のロースクール卒 | 43% |
再受験(過去に受験して不合格) | 24% |
【更新】小室圭氏が受験した2021年7月の司法試験の結果
2021年7月の試験の全米平均スコア(択一式試験)とニューヨーク州の合格率がリリースされました。以下の記事をご参照ください。択一式試験は例年よりもやや平均点が下がっています。その影響もあってかニューヨーク州司法試験の合格率も低下しています。
次回は、アメリカの司法試験合格までに必要な勉強時間やロースクール留学生のKKこと小室圭氏の合格見込み(?)について筆者の見解を勝手に述べています。お楽しみに!
【連載】米国弁護士試験のホントのトコロは毎週火曜日19時の配信となります。随時、質問などもわかる範囲でおこたえしていこうと思いますので、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
text ドナルド先生 2021年米国(カリフォルニア州)司法試験合格。世界中のディズニー制覇をもくろむアラフォー。