カリフォルニア州司法試験にマジで受かっちゃったドナルド先生による【連載】米国弁護士試験のホントのトコロ。前回はアメリカ弁護士試験の難易度についてお話しましたが、今回は試験合格までに必要な勉強時間などについてご紹介します。
米国司法試験合格までに必要な勉強時間はどのくらい?
多くの受験生は春にロースクールを卒業して、7月の試験に備えます。直前の2~3か月に一気に詰め込んで試験対策するわけです。複数の受験予備校が司法試験用のコースを提供していて、最大手の「BarBri」が提供するコースは22万円~45万円くらいで、日本人受験生はそれらの有料コースを受講したりしなかったり。私は働きながら長期スパンでの受験でしたので、必要なものだけを中古でeBayを通じて購入するか、Web上のものを利用するなどして勉強しました。
◆受験エリートにとっても楽勝ではない…
もともとの知識や英語力によりますが、多くの日本人受験生は400~600時間の詰め込み学習で合格レベルに到達していると思います。ただ、日本人留学生の多くが大手法律事務所の弁護士だったり、一流企業の法務部員で社内留学生に選抜された方々だったりと、いわば受験エリートです。アメリカのロースクールに入るために高い英語力も身につけ、留学中も法律に英語に猛烈に勉強されています。そのような方々でも合格率50%以下と案外苦戦しているというのが実情です。もちろん日本の司法試験の方がはるかに難関ですが、「米国司法試験なんて楽勝でした♪」という受験経験者は少数だと思います。
「米国司法試験に落ちた人なんて聞いたことない」という方もいらっしゃるかも知れませんが、落ちた人がわざわざ自白しないだけで、たくさんいらっしゃいます。私も何人も存じあげています。米国のロースクール留学経験があるのに米国弁護士資格がない方との会話で「受験しなかったんですか?」などと聞くのは地雷である可能性があるので避けましょう。
◆TOEICの点数は当てにならない?!苦労したのは…
英語ができれば合格する、というほどは簡単な試験ではありませんが、英語がある程度できなければ話にならず、特にReadingとWritingは高いレベルが必要です。私の場合はTOEICでは900点台ですが、助けにはなりませんでした。特にReadingのスピードが上がらずに苦労しました。
なお、記述式・MBE(後述)の試験問題のいずれにおいても、未知の英単語が登場して、度々日本人受験生を恐怖に陥れます。文脈から何とかなることも多いですが、記述式試験で際どい箇所に未知の単語が登場すると(特に問題文が短い場合とか)、かなりの痛手になることもあります。私は医療関係の単語(難しい病名とか薬品名とか)がでてくると厳しかったです。
小室圭氏のニューヨーク州司法試験の勝算を勝手に予想してみた
小室圭氏の場合は実質的に法律事務所からの派遣(パラリーガルにしては異例ですね)みたいなもののようですが、3年制のロースクールで学ぶ機会に恵まれています。小室圭さんと同様の立場の受験生(=全米法曹協会認定のニューヨーク州にあるロースクールの卒業生で、7月の受験が初挑戦となる受験生)の2019年の合格率は85%でした。その多くがネイティブ米国受験生であることを差し引くと、もう少し可能性は低いかも知れませんが、それでも1年制ロースクールの日本人受験生(70%よりも低い)と比べれば合格の可能性は高いでしょう。
よって小室圭氏が合格する可能性は70~80%といったところでしょうか。
受験資格(ニューヨーク州) | 合格率 2019年07月 |
全体 | 65% |
3年制の認定ロースクール(初回受験) | 85% |
1年制のロースクール卒 | 53% |
再受験(過去に受験して不合格) | 24% |
実際の問題と日本人受験生の基本スタンス!
◆例えば、記述式はこんな問題がでるよー
ニューヨーク州司法試験等で用いられたもの(目安:30分/問)
https://www.nybarexam.org/ExamQuestions/FEB2021QA.pdf
カリフォルニア州司法試験で用いられたもの(目安:1時間/問)
http://www.calbar.ca.gov/Portals/0/documents/admissions/Examinations/February2021CBX_Questions.pdf
記述式の試験ではネイティブとの差がつきやすいです。タイピング速度の違いなどから、論述できる分量が1.5倍~2倍は違います。ネイティブが各論点をしっかりと詳述して点数を稼ぐところ、日本人は論点の抜け漏れなく一応の答案を仕上げることが目標となります。例えばカリフォルニア州の試験の場合、模範答案は1500~2000ワードですが、日本人受験生は1000ワードが一つの目安となります。択一式試験で挽回することも可能なので、未完成答案等の大過失を避けてうまくしのぎたいですね。
◆例えば、択一式はこんな問題がでるよー
択一式試験(MBE)の問題のサンプル(目安:108秒/問)
https://www.ncbex.org/pdfviewer/?file=%2Fdmsdocument%2F17
四択問題ですね。従来は3時間で100問を1セットとして、午前午後の計2セット(計200問)の実施でしたが、直近のリモート開催では、90分で50問(108秒/問のペース)を1セットとして、計4セット(計200問)の実施となっています。時間に追われる試験ではありますが、大学受験などでマークシート形式の問題に慣れている日本人は比較的得意とするパートです。実際の裁判例がベースとなった設問が多く、一定のパターンがありますので、2000問程度の演習問題をこなすことで合格水準を超えることができるといわれます。私も最初に取り組んだ際には「倍の時間をかけて不正解」ということが多かったですが、徐々に解くスピードと正答率が上がり、試験直前までには8割以上は正解できるようになりました。
【連載】米国弁護士試験のホントのトコロは毎週火曜日19時の配信となります。随時、質問などもわかる範囲でおこたえしていこうと思いますので、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
text ドナルド先生 2021年米国(カリフォルニア州)司法試験合格。世界中のディズニー制覇をもくろむアラフォー。