人生の大先輩!作家の佐藤愛子先生の新刊が出たのでさっそく読了。元アナウンサーの小島慶子さんとの文通形式で繰り広げられるエッセイだったのですが、今回も読みごたえ抜群ですっごくおもしろかったです。
夫婦生活が、なんか、うまくいっていない…!と悩んでいる女性にはぜひ読んでほしいな♡
もくじ
佐藤愛子先生の鋭すぎるツッコミ。本音を問い詰めること、理解することの大切さ
1通目の手紙は小島慶子さんからはじまります。私が子どものころ、テレビでニュースを読んでいたバリキャリなイメージの小島さん。サロンで出されたVERYを読みながら(←私はセレブ妻でもなんでもないのですが)、夫婦でオーストラリアへ移住し優雅に暮らしているらしいということくらいしか存じなかったので、この本の1通目の手紙を通じて、私は彼女がこの生活をするまでの経緯(といっても数年前のだけど)をよくよく知ることになりました。
なんでも、小島さんがTBSを退社されフリーになった後、旦那さんも「一度仕事を離れて自分を見つめたい」ということで仕事を辞めてしまったのだそう。でもって、面白いことをやってやろう!と教育移住を思いつき、一家子連れでオーストラリアへ引っ越し。小島さんご本人は3週間ごとに日本へ出稼ぎしにきてるという生活を送っているらしいです。超パワフル。
◆ある日、夫が仕事をしなくなったら
ジェンダーの観点では、日本って、旦那は働くものという固定概念がまだ強く、主婦ならぬ主夫って、違和感がありますよね。小島さんの家はそれで“うまくいっている”らしいので、私ならそれ以上とやかく言わず、触らず、波風を立てず…と、スルーしてしまいそうですが、ここに切り込む鋭さはさすが佐藤先生。
「自分を見つめる」とは女子高生あたりがいいそうな言葉だと私は思うんだけど。それを五十年近くも生きて来て、それなりに充実した仕事をなし遂げてきたお方が言うなんて、よくよくのことがあったとしか思えません。あなたはそれを問い詰めたのか、理解したのか、そのへんの事情がどうもわからない。
引用:人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか ~女二人の手紙のやりとり~より
ここ読んでてちょっと笑っちゃいました。JKが言いそうなキレイゴトを50歳間近のオッサンに言われたら…。ましてそれが、自分の夫から発せられた言葉なら…。どうしてそんな事態に至ったのか?確かに徹底して問い詰めてしまいそうです。
◆夫婦でどこまで本音で言えてる?
しかし、小島さんはそうはしなかった。佐藤さんの質問に対し、次の手紙で「私にもよくわかりません。」と応答しています。結局この問題が、この本1冊を通して、ずっと尾を引いていくことになるなんて、読み始めてすぐの時には思いもよりませんでした。
幸せそうなイメージが先行する有名人ならではの苦労。夫婦喧嘩の勝ち方
本の中盤は、小島さんが抱える夫婦間の問題、そこから派生したさまざまな不調に関して、佐藤先生が「牛乳瓶を投げてうっぷんを晴らせ」とけしかけてみたり、「知らんがな、そんなこと」といつもの口調で諭したりするので、そこもすごく読みごたえがあります。
特に本のタイトルでもある酢ダコが好きか嫌いかの例えも、「蛸好きが偉くて、蛸嫌いが劣等ということではない」と。人は人、自分は自分できちんと切り分け、人それぞれと割り切れる大事さがよく伝わる場面でした。そして小島さんの目線で読むとつらくもなります。小島さんは異常に強い倫理観の持ち主で、どんなにまずいタコに当たっても、飲み下すのに死ぬような思いをしながら必死で美味しいと言っているちょっと生きづらそうな一面が随所に垣間見えるからです。
◆正しさの問題じゃない難しさ
テレビに出て、知名度も高い、小島さん。世間のイメージだったり、自身のプライドだったり、仕事をしていくなかで生まれたギャップが大きくなりすぎてしまったのかもしれません。後半になると、根本的な問題の深刻さに更なる熱が帯びてまいります。
恋の魔法が解けて「エア離婚」を選んだ小島慶子さんの家族会議の様子
結果から言うと、小島さんご夫婦は「エア離婚」をします。なんでも旦那さんが、昔、けしからんことをしたらしく(詳細は伏せられていて不明)、その出来事がきっかけで小島さんは精神を病むほどの事態に陥ったというから穏やか絵はありません。彼女は“仏のようないい人”という夫に対して抱いていた感情を「認知の歪み」とまで書いていました。恋の魔法が解けてしまったのですね…。
しかし、ここからの行動は、佐藤先生の夫婦げんかにも負けないくらい強烈…
「自分のようなひどいダメ女と一緒にいてくれるのは仏様のような夫だけ」という思い込みが解けて、夫は教祖ではなくなりました。
彼は子どもたちにとっては良き父親です。でも今度は息子たちを信者にしてしまいかねませんから、私がやるべきことは息子たちに予め教祖の正体を知らせておくことでした。
引用:人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか ~女二人の手紙のやりとり~より
えええ。なんか、私はこの辺りから、もうついて行けなくなりました。人生のガマン時って、ゴールがある程度見えないと、キツくないっすか?
詳細が伏せられているため、何か知らないけれど愚かなことをしてしまい、人として許してもらえなくなった小島さんの旦那さん。そして、それを思春期のお子さんに真正面から伝えたらしい小島さん。間に挟まったお子さんは、そのへんの会社の中間管理職並みにキツイ立ち位置ではないでしょうか。ヒッ!
◆一人の人にこだわり続ける必要はない
で、小島さんご自身は「エア離婚」をしてラクになったらしいので、まぁ、よかったなと、最後は少しホッとしました。その反面、子どもサイドの気分で読んでいると、なんだか頭痛がしてきそうな結末でもあります。妻として、母として、女として、本当に結婚って難しいですよね。
女性の経済的な自立とひとりで生きていける強さは別。離婚が持つ負の現実
特別付録のあとがき的な対談部分を読みながら、小島さんのオーストラリア移住が、子育て費用を日本とオーストラリアで計算して、オーストラリアのほうが安いから選んだと知って、更にズコっとなりました。佐藤先生は「主婦感覚がおありになるじゃないですか」と言っていらっしゃいましたが、この感覚って、超庶民な私からするとあまり一般的ではないように思います。
最後、佐藤先生からの「あなたたちは別れません。それが私の結論です。」という一節に、小島さんは涙が出たそう…。
よく離婚したいのにできない主婦の背景に、経済的な事情があげられますが、小島さんの場合は、ご自身に稼ぐ力があっても、離婚届を手にしても、本当の離婚には踏み切れずに「エア離婚」を選びました。
最後の涙のワケを、私の乏しい想像力でうーんと考えると、ちょっと切なくもなるのであります。いくらがんばって男性と同等に働き、お金の問題を解決したところで、離婚がもたらす現実的なさまざまなマイナス面の問題を解決はできないのだなと思ったからです。これはこれで苦しい。かといって、「カラダやココロを壊してまで、無理するのも、ねぇ。」というとき、落としどころが「エア離婚」なのかなぁ。
怒りや悩み、愚痴があふれる主婦の皆さん、「大丈夫」って背中を押してもらいたいときは、やっぱり佐藤先生のエッセイ。いろいろ考えるきっかけになるよ。今回は私がバンクーバーで撮影したキュンとする景色とともにお届けしました。小島さんが拠点をおくパースにも、いつか行ってみたいな。
今回ご紹介した本は<人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか ~女二人の手紙のやりとり~>です。
愉快痛快!年の差50歳の「真剣」勝負というキャッチーな本ですが、20代、30代の主婦の人にもグッとくるシーンがたくさんありますよ。夫にケンカで勝ちたい人にもおすすめ。私もいずれ、頭にくることが起きたときは、玄関で牛乳瓶を握り締め、夫の帰宅を狙って一撃でしとめようと思います(笑)
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