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教科書に載らない偉人の素顔が魅力的『日本史100人の履歴書』

普通の会社員よりも時間に余裕があるおかげか、斜め読みがうますぎるせいか、週に5冊の読書量がまぁまぁ多いような気がして、備忘録と本の整理を兼ねながら書評を書いていくこのコーナー。今回は日本史が好きな人にとってもおすすめな本をご紹介します。

矢部健太郎氏という国学院の先生が書いていらっしゃる『あの偉人たちにも黒歴史!?日本史100人の履歴書』です。いきなり帯には”家康の趣味はプロ級の薬作り!”という情報が。長生きの秘訣って自作の薬?!って興味をそそられて読み始めたんですけれども、すごく興味深いポイントがたくさんありました!

赤裸々告白も?!自由すぎる本人希望欄

この本は、古代、平安時代…近代へと100人の偉人たちが選出されて履歴書形式でどんな人物だったのかが紹介されています。100人だから、もうほぼほぼビッグネームばかり。歴史マニアならずとも、一度は聞いたとこがあるような有名な人ばかりが収録されています。だからすごく読みやすいし、テレビをみていて名前を知ってはいるけれども、なにした人だっけ?ってパッっと出てこない時に、辞書がわりに調べてみたりみたいな使い方もできます。

で、おもしろいのが偉業ばかりではなく、その人の人となりや人生がパッとわかるような工夫がたくさん施されているところ。私は履歴書の「本人希望欄」がすごく好きなんですけれども、いくつか秀逸なコメントをピックアップしてみました。

私の死後も摂政・関白の仕事はうちの子孫が継いでいたのに、あの豊臣って成り上がり者は何なのかね。
出典:第二章平安時代「藤原道長」

・・・彼が今の時代の教科書を読んでいたらこんな風に呟いていそう。

小早川秀秋だけは呪い殺してやりたいですね。
出典:第五章戦国時代「石田三成」

・・・やっぱり怒っているんだ。

「今宵の虎徹は血に飢えておるわい」なんて、さむいセリフいってません
出典:第七章幕末「近藤勇」

それは失礼しました!

ね。こんな風に、この本人希望欄が現代っぽいカジュアルな口調で結果論を踏まえたうえで語ってくるから、ちょう楽しい。日本史の教科書がこのくらいライトだったらもっと興味深く学べたかもなーとか思っちゃいました。歴史上の有名人物ってドラマなどでけっこう脚色されてしまって自分の頭にインプットされていることも多いので、けっこう近藤勇みたいなコメントって、多そうな気さえしますよね。

趣味から見える偉人たちの意外な横顔

冒頭の家康の薬づくりじゃないですけれども、本人が履歴書に書くかどうかは別として、趣味の項目も、資料や史実に基づいて考察された内容がカジュアルに書かれています。

和歌、漢詩、宮中のうわさ話
出典:第二章平安時代「紫式部」

なるほど。イメージ通りの高尚さが光るけど、清少納言とのバトルもすごそうでしたもんね。

手紙を書くこと
出典:第五章戦国時代「足利義昭」

今の時代に彼が生きていたら長文メールとか長文LINEとかしちゃいそうなタイプだったのかなぁ。

グルメ方面のチャレンジです。ラーメン、餃子、チーズなど、私が「日本で最初に食べた」ものはたくさんあります。
出典:第六章江戸時代「徳川光圀」

熱いPR。すごい。確かにグルメな偉人でしたがチャレンジっていう言葉のセンスもイケています。

偉人たちが成し遂げた偉業にばかり目が向けられがちな教科書よりも、なんか人間的な人柄とか普段の生活とかがちょっと垣間見えるような趣味欄。ここだけ読み進めていっても面白いですよ。紫式部の宮中のうわさ話は、女性あるあるかもしれないけれども、女性ばかりの独特な社会、なんだか会社の給湯室よりも内容が激しそうな予感すらします。偉人とヘンな人は紙一重では?!と思えるような部分もあり、歴史を動かして来たスゴイ人たちの意外な魅力を再発見できたりするかもしれません。

日本を動かした人たちの恋愛事情

履歴書の項目のなかには「恋愛関係」というのもあるんですけれども、ここの部分が私は大好き。恋愛って人生の黒歴史を一番残しやすい場所でもあるけれど、何事も先人に学べ。どんな人寄り添って、どんなふうに生きたのかという部分にフォーカスすると、人生のヒントが隠れているかも?!

失恋が出家の原因ともいわれています。
出典:第二章平安時代「西行」

イケメンでオシャレでエリート部隊の武士だったとも言われている西行。意外なハートのもろさにもひかれます!

頼朝様命♡
出典:第三章鎌倉時代「北条政子」

当時としてはめずらしい大恋愛でしたもんね。頼朝さまへの愛は海よりも深かったし(笑)

愛人の数は数えられません。
出典:第八章近代「伊藤博文」

「好色総裁」というあだ名だった伊藤先生・・・。確か津田梅子の本でもセクハラはやばかったみたいな情報を読んだことがあるので、今だったか完璧コンプラ違反ですね!

側室、妾、愛人、愛される側の女性の立ち位置だけみても、時代ごとの背景をうかがい知ることができる項目ですが、そこはやっぱり人対人。一人だけを愛し続けている偉人もいますし、一方でまったく女性との縁がなかったと思われるちょっとオタクっぽい偉人も。あれこれ妄想を膨らませながら、ドラマや映画にはないその人のストーリーを考察してみても勉強になります。

現代にも名を残しているスゴい人たちの人生がギュギュっと凝縮されている『あの偉人たちにも黒歴史!?日本史100人の履歴書』。空いている時間とかにちょこちょこっと読むのにもむいている本なので、ぜひ好きな偉人をチェックしてみてはいかがでしょうか?日本史では習わなかった意外な素顔に触れられるかもしれませんよ。お子さんがいるご家庭なら、親子で読んでみるのにもいいかもしれません。遊ぶように楽しく学べるおすすめの一冊です。

【INFO】

今回ご紹介した本は『あの偉人たちにも黒歴史!?日本史100人の履歴書』です。宝島社から2017年に出版されている矢部健太郎先生監修の本。